愛染院は三重県伊賀市にある真言宗豊山派の寺院である。
当寺は上野山平楽寺の子院東ノ坊と呼ばれたが、
文治建久年間(1190年頃)に醍醐寺の憲深僧正がこの地で後鳥羽天皇の病気平癒を祈願したので、
勅によって偏光山愛染院願成寺号を賜り、日向の法印鏡覚阿闍梨を開基とした。
天正9年(1581年)兵火で焼失し、寛文年間(1660年頃)に法印實恵が再興した。
当寺は松尾芭蕉生家の菩提所でもある。
芭蕉は愛染院のすぐ西にある赤坂の街で誕生し、29歳までこの地で過ごした。
その後江戸に移り、元禄7年(1694年)10月12日西国周遊の途中、大阪市南御堂花屋で病没した。
遺骸は、遺言によって膳所の義仲寺に葬られたが、芭蕉の臨終に馳せ参じた伊賀の門人、服部土芳、貝増卓袋は遺髪を奉じて帰り、菩提所愛染院に埋め、故郷塚(こきょうづか)ととなえた。
塚の碑は、服部嵐雪の筆によるもので、
元禄七年甲戌年
芭蕉桃青法師
十月十二日
と彫られている。
芭蕉没後、伊賀の門人たちは「しぐれ忌」と称して翁の忌日を追善し、現在は毎年10月12日に墓前法要が営まれ、芭蕉祭が執り行われる。
伊賀鉄道上野市駅下車、徒歩10分。