秋篠寺は、奈良市秋篠町にある寺院である。
当初は法相宗で、平安時代以降は真言宗となり、明治時代初期に浄土宗となったが、現在は単立宗教法人で既成の宗派に属していない。
宝亀7年(776年)に光仁天皇の勅願で創建され、桓武天皇の平安遷都とほぼ同時期に完成したといわれる。
本堂(国宝)は、講堂の跡に建てられた桁行五間、梁行四間、寄棟造、本瓦葺の堂で、鎌倉時代に改修されたものであるが、奈良時代の建築様式を残す均整のとれた建物である。
本堂内には、本尊の木造薬師如来坐像、木造伝伎芸天立像等が安置されている。
大自在天王(シバ神)が天女に囲まれて天界の歌舞を楽しんでいると、髪の生え際から天女が生まれた。
容姿端麗で並みいる天女の誰より技芸に秀でていたので、伎芸天と呼ばれた。
秋篠寺の伎芸天立像は、1135年の兵火で頭部を残して大きく破損したが、鎌倉時代に再び胴体が作られた。
かすかに憂いのある優美な表情、豊満な肢体、微妙な動きが特色で、重要文化財に指定されている。
大元堂には、宮中においてのみ修められる大法大元帥御修法(だいほうだいげんすいみしほ)の本尊として重んじられ、国内唯一の像として伝わる秘仏の木造大元帥明王立像が納められている。
毎年、6月6日に開扉されるが、秘仏の写真が堂前に飾られている。
秘法の霊泉「香水閣(こうずいかく)」では、井戸から明王が現れ、そこから湧き出る香水で例年1月7日の御修法に際し献泉の儀をつとめたといわれる。
近鉄奈良線大和西大寺駅からバスで秋篠寺下車すぐ。参拝者用の駐車場がある。