大乗寺は、兵庫県美方郡香美町にある高野山真言宗の寺院である。
亀居(かめい)山と号し、俗に応挙寺と呼ばれる。
大乗寺略記によると天平17年(745年)行基菩薩が聖観音立像を刻み本尊として開創したことに始まると伝えられている。
室町時代には、山名氏の帰依を受けて、寺門が隆盛したが一時衰微した。
安永年間(1772-80)に密蔵上人が再興を計画し、密英上人により寛政7年(1795年)に庫裏を含めた現在の建物群が完成した。
円山応挙(1733-1795)は、狩野派の石田幽汀に学び、その後自然の写生に専念したり、西欧の遠近法等の手法を学び、彼独自の新しい画法としての写生画を完成させ、円山派の祖と仰がれている。
応挙が書生として修行中に、密蔵上人に認められ援助を受けたことが縁で、客殿の建設の際に弟子12名と共に大乗寺の障壁画等を描き、165点が国の重要文化財に指定されている。
応挙は、玩具商のもとで鏡面を使ってみる風景画「眼鏡絵」を手がけて、遠近法の強調の仕方を習得したという。
現在、本堂、薬師堂、山門、客殿、應挙霊寶庫、庫裏があり、平安後期の聖観音立像、十一面観音立像が祀られている。
志賀直哉は、暗夜行路の中で、次のように記している。
「応挙が一番多く画いていた。その子の応瑞、弟子で呉春、(長沢)芦雪もあり、それぞれおもしろかった。」
歌人与謝野鉄幹夫妻も次の歌を残している。
「羨まし 香住の寺の筆の跡 作者みずから楽しめるかな」(鉄幹)
「いみじくも みろくの世までほろぶなき 古き巨匠の丹青のあと」(晶子)
JR山陰線香住駅下車、車で5分。来訪者用の駐車場がある。