日吉大社は、滋賀県大津市坂本本町にある神社である。
およそ2100年前の崇神天皇7年に創祀されたといわれ、全国3800余りの分霊社(日吉、日枝、山王神社)の総本宮である。
祭神は、西本宮(ほんぐう)の大己貴命(おおなむちのみこと)、東本宮(二宮(にのみや))の大山咋命(おおやまくいのみこと)を主神とし、
摂社五社(樹下神社、牛尾神社、三宮神社、宇佐宮、白山姫神社)をあわせて「山王七社(さんのうしちしゃ)」として知られる。
山王とは、大津宮がおかれた7世紀頃に大和から遷された上の社、中の社、下の社あわせて社内108社の総称である。
古事記には日枝(ひえ)と記され、延喜式神名帳では、日吉(ひえ)神社、名神(みょうじん)大社と記されている。
東本宮の神々が神体山(牛尾山、八王子山、波母山)頂上の磐座(いわくら)に祀られ、山宮と里宮が営まれたのが神社の起源とされ、
西本宮は大津宮の時に天智天皇によって、大和の大神(おおみわ)の神を三輪山から勧請し、国家鎮護の神として祀られた。
平安遷都の折には、この地が都の表鬼門(北東)にあたることから、都の魔除、災難除を祈る社として、また最澄が天台宗を始めて以降は、比叡山の地主神、天台宗の護法神として広く崇敬された。
元亀2年(1571年)、織田信長の比叡山焼打ちの際に兵火を受け、中世以前の建造物は焼失したが、
東西本宮の神殿が桃山時代の建築で国宝に指定され、各拝殿、楼門などが桃山時代から江戸初期の再建で国の重要文化財になっている。
境内には、魔除けの象徴として、神猿(まさる)と呼ばれる猿が祀られ、「魔が去る、何よりも勝る」に因んで大切にされている。
東本宮の家紋は葵で、境内には、家紋を彫った石が置かれ、その横では葵が育てられている。
境内には、約3千本のもみじがあり、関西屈指の紅葉の名所として知られている。
京阪電鉄石山坂本線坂本駅下車、徒歩10分。旧竹林院東側の道路を北に入ると参拝者用の駐車場がある。
例祭の山王祭(4月12日〜14日)は、湖国三大祭の一つに数えられる壮大かつ勇壮な祭りである。
延暦10年(791年)、桓武天皇が日吉社に二基の神輿を寄進して以来1200年以上の歴史を有するもので、天下泰平・五穀豊穣が祈願される。
3月の初めに、八王子山山頂に担ぎ上げられた二基の神輿が、4月12日夜、山頂から駕輿丁(かよちょう)とよばれる下帯一本の若い衆によって担いで降ろされる(午の神事)。
その後東本宮の拝殿で、この二基の神輿は交合の神事を行う。
13日午後、日吉馬場を甲冑姿の稚児行列が西本宮へ向かう(花渡り)。
宵宮場で駕輿丁の若い衆が四基の神輿を激しく揺すり、甲冑姿の武者の走り込みがあり、その後、神輿は地上に落とされ、若宮の出産となってクライマックスを迎える。
14日は、天台座主の読経などの後、神輿は琵琶湖を船に乗って静かにわたる(申の神事)。
なお、七基の神輿は、延暦寺の僧兵によって、たびたび強訴のため利用されたことでも名高い。