高野山関連の俳句、和歌、詩歌

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(3)紀伊国名所図会

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地名俳句歳時記(7)所収俳句
高野町
旅荷とはなれど高野の蕨とて 池内たけし
ひとすぢの高野の町を涅槃西風(にし) 辻本青塔
酒旗高し高野の麓鮎の里 高浜虚子
石楠花や高野に住みて且つ院家 森白象
夏山に沈みて高野紙を漉く
夕陽傘さして高野へ著(つ)く女 京極杞陽
高野にも街騒ありて夕牡丹 石倉啓補
高野への幾重の谷の朴の花 中尾吸江
一筋の高野の町の夜の秋 中山梟月
寝しづまる高野の町や天の川 相島虚吼
なほ奥へ高野の町を萱負女 小畑一天
解夏(げげ)の僧高野の町の人ごみに 後藤暮汀
霧に灯を投げて高野の珠数屋かな 細川子生
鈴の鳴り人現れ霧の高野路 猪野翆女
尼僧ゆく高野の町の夕紅葉 小原うめ女
高野まで秋の暑さを持ちて下車 藤浦昭代
焚火してところところに高野市 森白象
高野六木
高野槙売りかたはらに蕨売り 池内たけし
日蔽内(ぬち)ひさぐは供華の高野槙 清崎敏郎
老杉に梅雨深かりし高野山 松本秩陵
杉の秀(ほ)にかかる高野の梅雨の月 上原美久江
掃苔の人になみ立つ高野杉 長谷川素逝
霧とぶや高野は槙を供華に剪(き)る 上村占魚
杉の秀に高野の月として上る 新村寒花
高野山杉の奈落の稲刈れる 金森柑子
育ちゆく月を高野の杉に見し 平木谷水
月ひくし高野大杉高ければ 吉田憲司
杉の間に綿虫ながれ高野山 塩田東邨
高野山
金剛峯寺
月おぼろ高野の坊の夜食時 蕪村
深々と雪の高野の涅槃通夜 田村睦村
降る雪に涅槃声明なほつづく 戸田銀汀
初蛙高野泊りの夜もすがら 小原菁々子
花冷の高野の坊に寄り臥せる 清田松琴
夜が明けて春雪浄土高野山 志賀青研
暮れてより高野泊りの蛙鳴く 高浜きみ子
涅槃会の月のくまなき高野山 桑田青虎
菩提寺の高野の山の遅桜 瀬在苹果
炎天の空美しや高野山 高浜虚子
人の世の今日は高野の牡丹見る 高浜虚子
ほととぎす高野の数珠をかけ下山 大橋桜坡子
時鳥(ほととぎす)高野百坊まだ覚めず 朝鍋住江女
滝仰ぐより巡礼のはじまりぬ 深川正一郎
高野辞す名残りの沙羅に又佇(た)てり 村上杏史
牡丹の金剛峯寺に虚子来しと 山口笙堂
高野には高野の僧規ほととぎす
夏霧の冷ゆる高野の宿坊に 原三猿子
梅雨に入るらしき高野の雷雨かな 能美丹詠
高野山なる百坊梅雨に沈みけり 松本秩陵
沙羅にまだ早き高野の火桶かな 中尾吸江
沙羅の花昨日も今日も見て高野 大塚郁子
高野訪ふことの年々朴の花 高島秋峯
勤行へ高野泊りの明易し 栗原みよ子
月の坂高野の僧に逢ふばかり 高浜虚子
むささびの鳴いて高野の夕月夜 松尾いはほ
霧のみち高野の僧と共に行く 池内たけし
秋風に袖ひるがへし高野僧 今井つる女
新秋の高野の蚤にくはれけり 日野草城
夜寒さの高野の坊の早寝かな 古藤一杏子
馬の荷のみな盆物や高野山 森川暁水
露の身を今日は高野の旅にあり 渡辺汀人
霧に傘さし上山の高野僧 小原菁々子
銀漢や水豊かなる高野山 細川子生
年々のこたびは霧の高野みち 塩見武弘
初紅葉とて薄からず高野道 百崎つゆ子
朝寒や高野の僧のかぶりもの 岡田耿陽
底冷のしては高野のしぐれぐせ 森白象
仏飯を喰むで高野の寒鴉 佐藤慈童
しづり雪身に浴ぶことも高野なれ 松本巨草
雪掻きて高野を出でぬ身なるべし 森田峠
高野なる月よりこぼれきしは雪 村元子潮
星凍てて高野を闇に沈めたる 辻口静夫
僧の間に高野は早き炬燵して 和気祐孝
残りとは寺の布団をつみ重ね 稲畑汀子
谷水も凍てつく高野に師を訪ひて 片岡我当
雪ありて雪晴といふ高野山 徳永玄子
雪深く耐ゆるみ仏高野山 水見壽男
冬ざれや高野の僧の足早に 五十嵐哲也
新年
高野山座主手づからの屠蘇拝す 勝尾艸央
大門
大門の四方の雨垂れ梅雨に入る 松本巨草
雨ついて来し大門やほととぎす 中島よし絵
大門の忽然として霧の中 今井つる女
大門のはるかに見ゆる狩の道 三星山彦
壇上伽藍
大塔の空より霽(は)れし朝の霧 小原菁々子
秋深し高野四郎の鐘わたる 百崎つゆ子
女人堂
女人堂と聞くさえ哀れ苔の花 斎藤双風
すぐ脇に老鶯(ろうおう)の谷女人堂 高島筍雄
女人堂露の一灯奉る 今井つる女
奥院
馬酔木咲く高野の墓地は塵もなく 河合いずみ
桐咲けば桐の空あり高野谷 細見綾子
朴若葉胎蔵界の風吹けり 沢木欣一
桜実に西行堂の白障子
鮠(はや)泳ぐ奥の院なる水行場 滝沢伊代次
秋の雨洗ひ浄めし無明橋 今井つる女
奥之院までの参道霧冷えす 田伏幸一
信長も露の高野に?会一処 中島不識洞
明けてゆく霧を掃かれて奥の院 川田朴子
御影供
御影講や顱(つむり)の青き新比丘尼 許六
御影供の人出堰きつつ輿すすむ 佐藤慈童
還俗の弟子も来てゐる御影供かな 森白象
得度してふるさと遠し空海忌 三星山彦
とこしへにいろは歌あり空海忌 兼田英太


山内潤三氏「高野山詩歌句碑一覧」(1970年) ぐるりん関西
地域順
番号
碑の名称 年月日 寸法 年代別
1 同期の桜詩碑 昭和42年
(1967)
8月15日
H68W123 76 同期の桜供養塔
第二次世界大戦の終局まじかーーー守りつがん永遠に
2 青嵐句碑 昭和27年
(1952)
3月
H105W60
奥行40
55 永田青嵐句碑
お遍路の祖師と在るこころ尊とけれ
3 寛演歌碑 昭和5年
庚午(1930)
H206W45
奥行23台H28
50 寛演歌碑
みほとけのりやくの程そ有難き病気忘れし今日の嬉しさ
妣田圭子歌碑
池内たけし句碑
右田百女句碑
弘法大師お夢告の歌碑
野村晃円(尼)歌碑
4 人道之歌碑 昭和41年
(1966)
H80W72
奥行26台6
75 人道歌碑
わかまこと(略)
5 道しるべ秋双句碑 年代不明 H132
W26
風すゝしこゝ浄域の第一歩
6 かげらふ塚 昭和39年
(1964)
70 かげろふ塚
在りし日のかたみともなれかげらふ塚
7 平山居士句碑 天保14年
(1843)
H100W65
奥行20
台23
18 平山居士句碑
明ぼのや暫(しばらく)ながら雪の峰
補遺13
(再掲)
弘法大師お夢告の歌碑 昭和44年
(1969)
無し 弘法大師お夢告の歌碑
いてつく日ややけつく日また 野村晃円(尼)歌碑
あらしの日辻の地蔵の姿しのべよ
補遺14
(再掲)
弘法大師お夢告碑
前花いけ歌碑
昭和44年
(1969)
弘法大師お夢告碑前花いけ歌碑
艪の舵も
蓮葉の
8 旧玉川歌碑 慶長16年
(1611)
H190W40
奥行24
2 玉川歌碑
忘れてもくミやしつらん旅人の高のゝおくの玉川の水
9 塊翁句碑 文化10年
(1827)
H118W64
奥行33
台50
12 塊亭碑(塊翁句碑)
霧となる香の薫りや九百坊
10 五大種歌碑 元和7年
(1621)
寛永10年
(1633)
H190W52
奥行30
4 五大種歌碑
偶然の炎の枕の夢さめて柳はみとり花ハくれなゐ
11 極楽塚句碑 昭和31年
(1956)
H120W32
奥14
59 極楽塚 棒洋句碑
歳の暮浮世はものゝ夢なれや
12 極楽塚歌碑 昭和31年
(1956)
H270
W115
奥行50
大20
60 極楽塚 藤田丁亥次歌碑
極楽はあるべきものを何人も
忘れさらめや誠つくして
13 富安風生句碑 昭和39年
(1964)
69 富安風生句碑
一山乃清浄即美秋の雨
18 鶴亀淀八句碑 大正5年
(1916)
H59
W76
奥10
42 鶴亀淀八歌碑・句碑
高野成淀に恵水の養老盃□
19 御詠歌歌碑 昭和33年
(1958)
4月吉日
63 御詠歌歌碑(堺堀越観音講)
かりのよにしやくでくるしむひとあらば
大慈大悲とたのめすくわん
20 慈忍歌碑 昭和42年
(1967)
77 慈忍歌碑
わがためと思ふ心はあださくら
人にはつくせ己が誠を
補遺3
(再掲)
高田万二歌碑 明治25年
(1892)
無し 高田万二歌碑
浮世へし我おもかけはさくら花
ちりてきえゆく身こそあはれ
23 詠久句碑 嘉永6年
(1853)
22 詠久句碑
落光の清さや杉の下涼
26 伊藤氏墓、一捕・完来句碑 文化9年
(1812)
無し 伊藤氏墓、一捕・完来句碑
在すかと夢に夢見て浮の秋
空ミれは空まて峯の月ひとつ
27 中村徳蔵句碑 明治39年
(1906)
33 中村徳蔵句碑
みほとけの慈悲にそあらむかん子鳥
補遺4
(再掲)
猪瀬恵以墓句碑 明治42年
(1909)
無し 猪瀬恵以墓句碑
御墓に尊き山の落ち葉かな
補遺2
(再掲)
成田屋眼玉白猿歌碑 天保8年
(1837)
成田屋眼玉白猿歌碑
人間の道をたつねてきたるはし
かうゝゝとおしへくたさる
33 五代五兵衛歌碑 明治9年
1934)
H113W45
奥16
台33
52 五代五兵衛歌碑
盲と唖の教えの道に盡してし 勲高き君仰くかも
34 八木家之墓歌碑群 昭和31年
(1956)
64 八木家之墓歌碑群
幸うすく若く浄らに散りし霊に
やさしく侍べれ乙女椿よ
35 市紅句碑 明治35年
(1902)
H65W16 29 市川團藏家墓所
なく虫を我(?)道連や秋の山 市紅句碑 団猿句碑
36 団猿句碑 明治35年
(1902)
H65W16 30 市川團藏家墓所
心にも白きは清し冬牡丹 市紅句碑 団猿句碑
補遺9
(再掲)
喜野家終戦
八月十五日歌碑
昭和26年
(1951)
喜野家終戦歌碑
生きかへり死にかへりつゝ
日の本の御國守らむ大和男子は
39 芭蕉句碑 安永4年
(1775)
H87W55
奥28
台30
5 芭蕉句碑
父母のしきりにこひし雉子の聲
補遺8
(再掲)
九度山萱野家句碑 昭和16年
(1941)
無し 九度山萱野家句碑
寂寞の中に聲あり呼子鳥
40 父母恩重歌碑群 昭和40年
(1965)
H280W130
奥100
台120
73 父母恩重碑
父恋し母なつかしといしふみを
建てて昔を偲ふ今日かな
なし 聖徳公子歌碑 昭和57年
(1982)
H250 なし 聖徳公子歌碑
やみよりやみえきえはてし
有縁無縁のみどり子をあはれみ給ひて地蔵尊
41 初代歌沢之歌碑 昭和4年
(1929)
H155W60
奥11
48 初代哥澤之歌碑
浅しとてきき流さめや歌澤の
ふかきこゝろは知る人そしる
なし 筆塚歌碑 H100 なし 筆塚歌碑
宿願のわが筆塚をまほろばに
高野の杉の青墨のいろ
補遺10
(再掲)
大林堂登美子歌碑 昭和43年
(1968)
無し 大林堂登美子歌碑
身におよふうきことゝゝをかさね来て
感謝に生くるのれん尊し
補遺7
(再掲)
山色天来仏山人歌碑 昭和6年
(1931)
山色天来仏山人歌碑
雪しろきひらをのこして大比叡も  (井村米太郎(真琴)墓歌碑)
をひえも空のいろに晴たり
43 扇面句碑 昭和40年
(1965)
H45W75
奥行11
台55
72 扇面句碑
鎌倉の夢見てさめて雪篭り
補遺5
(再掲)
勲三等高田慎蔵歌碑 明治43年
(1910)
無し 高田慎蔵夫妻供養塔(歌碑)
高野山浮世の雲をよそにして
心しつかに月をなかめむ
47 慶長十八年歌碑 慶長18年
(1613)
H130W26
奥10
3 慶長十八年歌碑
高野山たのむこころのふかければ
あさき石井もくみはつくさし
48 徳栄講歌碑 大正2年
(1913)
H300W56
奥18
台185
40 徳栄講歌碑
法の為たつるいくさをもたか野山
その名はくちじ末の世迄に
49 村田順子辞世歌碑 明治40年
(1907)
H75W30
奥30
台68
34 村田順子辞世歌碑
あちきなき浮世をすてゝ極樂の
はちすをわけて母をまたはや
52 龍山院歌碑 安永7年
(1778)
H102W37
奥30
台105
6 龍山院歌碑
諸友とこめし契もあしきなく
うつれはかわる天野むら雲
53 生駒家歌碑 年代不明 H45W86
奥27
0 生駒家歌碑
思ひたつ心のまゝにはつことは
神の扶けのあるものと知れ
54 杉苗五千本歌碑 明治41年
(1908)
H197W34
奥75
35 杉苗五千本歌碑
子を思ふ親ほとおやを思ふ子は
人の道行人と云へし
55 天保玉川歌碑 嘉永元年
(1848)
H183W110
奥15
台25
21 嘉永元年玉川碑歌碑
わすれても汲みやしつらむ旅人の
高野のおくの玉川のミつ
なし 蕪村玉川句碑 平成15年
11月15日
(2003)
蕪村玉川句碑
玉川に高野の花や流れ去る
56 弘龍庵歌碑 昭和27年
(1952)
H92W30
奥30
台94
57 弘龍庵歌碑
ありがたや南無阿弥陀仏の喜びの
供養の塔に身を納めなん
57 正和元年
大中臣弘泰歌碑
正和元年
(1312)
H220W38
奥41
1 大中臣弘泰歌碑(日本最古の歌碑)
いにしヘハはなさくはるにむかひしに
にしにくまなき月おみるかな
59 研暢、観広、
本雄、友情の歌碑
嘉永7年
(1854)
H107W70
奥25
台35
23 研暢、観広、本雄、友情の歌碑
ちきりをく御法の花の種なれハ
匂ひもふかくここに咲らむ
61 鶴沢清六歌碑 昭和35年
(1960)
H49W94
奥12台14
65 鶴澤清六歌碑
うつし身はこゝにねむれど絃のわざ
妙なる音色永久に残らん
612 すめらぎとともに聴けるは清六の
ちからこめたる撥おともよし
68 中野広三郎歌碑 昭和41年
(1966)
中野広三郎歌碑
みおしえの徳をかしこみ常日頃
迷いもせずに徳を積みしか
別れ行く君の姿ハみえねども
徳の光はいつの世までも
69 アンボン島
戦士之詩碑
昭和40年
(1965)
71 アンボン島戦士之詩碑
共に征き、共に戦い
なし 白猫句碑 白猫句碑
消えてくる程遠からず春の鐘
70 一福句碑 昭和31年
(1956)
無し 一福句碑
焼け失せし過去帳の魂まつりけり
祖師の邊に集い在してあたたかく
71 山口誓子句碑 昭和36年
(1961)
66 山口誓子句碑
夕焼けて西の十萬億土透く
73 親鸞報恩歌碑 大正7年
(1918)
親鸞報恩歌碑、見真大師墓句碑
迎へく祖師の御跡をしたひ来て
御影に逢そ今日のうれしき
74 見真大師墓句碑 明治38年
(1905)
親鸞報恩歌碑、見真大師墓句碑
法の縁くちぬちかひや石の文
76 木板詩歌碑(一) 上野家詩歌碑
白蓮の花咲き燃える霊山の
慈悲に煌やく法界の廟
81 高浜虚子普賢院句碑 昭和32年 H117W68
台ナシ
琴瑟に仏法僧も相和して
なし 森白象句碑(普賢院) 森白象句碑(普賢院)
いく度も時雨し月の庭に立つ
なし 森白象句碑(普賢院芭蕉堂前) 森白象句碑(普賢院芭蕉堂前)
平凡を倖せとして去年今年
なし 森郁子句碑 森郁子句碑
朴咲くと聞けば高野に帰りたく
なし 黒田杏子句碑 平成19年
(2007)
黒田杏子句碑(無量光院)
涅槃図をあふるる月のひかりかな
なし 池田兎余子句碑 昭和55年 池田兎余子句碑
来なれては高野も近し沙羅の花
82 光台院御所桜句碑 年代不明 H143W25
奥17
光臺院御所桜句碑
古への由緒とはすも御所桜
なし 五十嵐播水句碑 五十嵐播水句碑
籠り僧ことりともせず蟻地獄
なし 北尾鏡之助句碑 北尾鏡之助句碑
夜桜の門あけてある御寺かな
なし 豊長みのる句碑 平成5年 豊長みのる句碑
千年の杉のこゑ棲む青高野
83 金剛峯寺前
道しるべ句碑
明治17年
(1884)
川上玉園句碑
高野山のぼりてうれし花の笑み
84 大師教会
いかせいのち詩碑
昭和37年
(1962)
大師教会いかせいのち詩碑
このわらべ 心みな
85 大聖院
松本浜子歌碑
大正7年
(1918)
しのひねを
86 大門田村木国句碑 昭和32年
(1957)
田村木国句碑
山門を出てゝ秋日の谷深し
補遺2 成田屋眼玉白猿歌碑 天保8年
(1837)
無し 成田屋眼玉白猿歌碑
人間の道をたつねてきたるはし
かうゝゝとおしへくたさる
補遺3 高田万二歌碑 明治25年
1892)
高田万二歌碑
浮世へし我おもかけはさくら花
ちりてきえゆく身こそあはれ
補遺4 猪瀬恵以墓句碑 明治42年
(1909)
無し 猪瀬恵以墓句碑
御墓に尊き山の落ち葉かな
補遺5 勲三等高田慎蔵歌碑 明治43年
(1910)
無し 高田慎蔵夫妻供養塔(歌碑)
高野山浮世の雲をよそにして
心しつかに月をなかめむ
補遺7
山色天来仏山人歌碑 昭和6年
(1931)
無し 山色天来仏山人歌碑
雪しろきひらをのこして大比叡も  (井村米太郎(真琴)墓歌碑)
をひえも空のいろに晴たり
補遺8 九度山萱野家句碑 昭和16年
(1941)
無し 九度山萱野家句碑
寂寞の中に聲あり呼子鳥
補遺9
喜野家終戦
八月十五日歌碑
昭和26年
(1951)
喜野家終戦歌碑
生きかへり死にかへりつゝ
日の本の御國守らむ大和男子は
補遺10 大林堂登美子歌碑 昭和43年
(1968)
無し 大林堂登美子歌碑
身におよふうきことゝゝをかさね来て
感謝に生くるのれん尊し
補遺12 長慶宇宙門辞世歌碑 大正5年
(1916)
無し 吉村長慶宇宙門辞世歌碑
死は宇宙の大神霊に帰するもの
生まれるよりも永久に活るなり
補遺13
弘法大師お夢告の歌碑 昭和44年
(1969)
無し 弘法大師お夢告の歌碑
いてつく日ややけつく日また 野村晃円(尼)歌碑
あらしの日辻の地蔵の姿しのべよ
補遺14
弘法大師お夢告碑
前花いけ歌碑
昭和44年
(1969)
弘法大師お夢告碑前花いけ歌碑
艪の舵も
蓮葉の
なし 三星山彦句碑 昭和45年 三星山彦句碑(高野町神谷)
吹雪ゐる山河少年の日の山河

紀伊名所図会に収録された和歌、俳句
紀伊名所図会 (2)
2P618 奥の院より大門口其3
寄墓祝といふこころを
君か徳 高野にしるし 立ちなみて 
大名方もをさまれる御代
玉川舎
2P632 奥の院より大門口其10
2P644 谷上総図
鷲の峰 鶴の林も とりの名の 
たかののおくに 有明の月
東武 栗園
2P647 千手院谷ほか総図
入道寂然大原に住侍りけるに
高野よりつかはしける
山ふかみなるる かさぎのけぢかきに
世にとほさかるほとぞしらるる
西行
2P647 千手院谷ほか総図
あかつきの しらみかかれば たびびとの 
かゆき かくゆく 千手院谷
寡垢人
2P648 千手院谷つづき
うくひすの なくなみた見む 女人堂
樗堂
2P649 千手院谷つづき
石蕗咲や 滝のしぶきに ぬれなから
鱸仙
2P652 五室谷
仏(ほとけ)には なり過たりや 高野山 
あみだがみねを こえてゆくかう
法橋紹巴
2P652 五室谷
青厳寺と興山寺の あひだの谷にて 
ほととぎすの おとしぶみと 
いふものをひろひて
しのび音(ね)を まきやこめしと おもふまで 
ゆかしき文を いさひらきてん
百舌鳥草茎
2P655 一心院谷
内大臣実隆公永正四年四月登山したまひて
都に帰らせたまふとき
一心院の奥乃坊を出たまふとて
別をおしみたまひて
おもひ入しひとつこころの
奥を出て帰へらむ
塵の世をいかにせむ
廣隆
2P669 町卒塔婆
続千載集
正和二年法皇高野山に御幸侍りし時、世々の跡にこえて、山のほど
御輿にもめされざりしかば、おもひつづけ侍りける
高野山みゆきの跡はおほけれど
まことの道は今ぞ見えける
僧正道順
2P673 勝利寺
続千載 羇旅
高野にまうで侍りける道にてよみ侍りける
定めなきうき世の中としりぬれば
何所(いずく)も旅のここちこそすれ
高野法親王道法
2P676 続千載 哀傷
従一位貞子身まかりける骨を高野におくり侍るとて
道にてよみ侍りける
行くさきの道もおぼえず高野山(たかのやま)
これをわかれのはてとおもへば
法印憲基
2P682 天野社神事能
あふげ人すずしさそふる神かぜに
まよひのちりはみな月のそら
雲堂
2P687 出観集
秋のはじめ天野のやしろにまうで給へりけるに、
月のあかくて風のはげしかりければ
さもしるき月の光もあるものを
何か嵐の秋とふくらん
覺性法親王
2P687 出観集
これを人のかたりけるをきゝて
奉りける
雲はらふよはの嵐のあればこそ
秋行く月の影も見ゆらめ
行宴法師
2P687 出観集
十月ばかり當社にまうでゝ
あはれにも尊くもたゞ葛の霜
塊亭
2P693 西行堂
西行法師のりきよといひしときの妻、
尼となりて天野にすまれしあとゝて、
今に草庵あり。秋のころ
なく蟲の草にやつれていく秋か
あまのに残る露のやどりぞ
似雲
2P694 西行堂
堂の前に西行が狭田(はざまだ)といふあり
その田今に蛙なく事なし且上人をそ
詠じける歌とて
西行がたまたまつくるはざまだの
畝(うね)のせまちのあるぞうれしき
2P697 笠木坂
御幸(みゆき)せしむかしをとへば笠木坂
さしてをしふる人かげもなし
白菅荒海
2P697 矢立茶屋
?蔭記行
故事(ふること)を聞きもらさじと杉の名の
矢立の筆をふるふ木(こ)の本
2P698 袈裟掛石
続千載
高野山(たかのやま)にまうで侍りけるとき
山路(やまぢ)にてよみ侍りける
跡たえて世を遁(のが)るべき道なれや
岩さへ苔の衣(ころも)きてけり
仁和寺法親王守覺
2P698 捻石(ねぢいし)
ねぢ岩のねぢももどらむ初しぐれ
萍左
2P700 七色木
はぜぬるで楓松杉藤柏
この七色を一樹(いちき)にぞみる
2P701 P14 鏡石 絵
杖突いてむかへばこしもかがみ石
われより先に老やすみける(む)
泥田坊
2P702 鏡石
鏡石と申すと教へければ、
「いざたちよりて見てゆかむ」
などずしつつ
世の塵もかゝからぬ岩や法(のり)の師の
すます心の友かゞみなる
首麻呂
2P702 関屋
さくら咲く高野(たかの)の関屋あれぬとも
とめまほしきは春にぞ有りける
易興
2P703 見越坂(みこしざか)
見越坂より淡路島の見ゆるに、
道範大徳のさすらへられしときの歌おもひ出てゝ
わだの原あはと見わたす淡路より
ながめくらしゝ昔をぞおもふ
濱名浦雄
2P704 大門口関屋合戦 絵
春日さすいはねのゆきのあともなく
くつれおちけむもののふのとも
首麿
2P708 大門 絵
つばくらのしげき出入りや雲のそで
高野 杦(すぎ)聴
2P710 大門2 絵
千山
西行とわらひくらべの山路かな
2P711 大門3 絵
生抜(はえぬい)て名にもたかののかがみ石
ほってもよそへうつすべきかは
泥田坊
2P711 大門4 絵
陽炎や鳥のあつまる仏供岩
芦角
2P711 大門5 絵
2P712 角石(かどいし)や疾(と)きいなつまのすり火うち
見義
2P712 大門6 絵
朝日うけ都卒(とそつ)のつゆかなみた川
佳流
2P712 大門7 絵
七筆の歌本を見むいろいろに
分けて見せたる茂りかな
千水
2P714 大門8 絵
空蝉や袈裟かけ石にしがみつき
明子
2P714 大門9 絵
矢立杦(すぎ)の聲をききて
たちにけむ炎(ほむら)よりもはやくすぎしよを
杦の木かげにおもひこそすれ
千川
2P716 大門10 絵
五月雨や丁石のほる蝸牛(かたつむり)
陰松
2P717 大門11 絵
久かたの天野の宮居下に見て
雲わけのほる八重の坂道
信雄
2P718 大門12 絵
白雨(はくう ゆうだち)や
はしりついたる笠木坂
ト枝
2P720 天野 絵
名木桜といふをみて
えだをりてとがめられなばなかなかに
めんぼくもなきさくらちりまし
拾栗山人
2P728 西行松
西行の草履もかゝれ松の露
芭蕉
2P728 衣掛櫻
とりかけし御衣(みけし)の雫かしこみて
今も涙のちる櫻かな
橘可折
2P730 丁田天神 清水町 絵
西行墓にて
あととはむ鳥も清水の柳かげ
拾栗山人
2P732 玉屋 絵
かるかやのむかしよりとしとしにしげりさかえて
遊びどもおほかる宿也
あそびめの貌の玉屋にみつづけの
子を尋ねくる父もあるべし
泥田坊
2P738 苅萱堂
風にちるかるかや堂のけしの花今道心と蝶も尋ねん
玉川舎
2P740 神谷辻
高野山にまうで侍る。たよりなるかみや村に
諏訪なにがしの家に立ちより侍りて
契(ちぎり)あらば又もとひこむ高野山(たかのやま)
麓をしむる宿のあるじを
寂靜
2P741 称名院右府記
おのおのたびのよそひして下山す。
昨日も山中野火所々見えし、
今日はまた大きなる木やけて、
折かへりたる中よりほのほあがれり。
右は山左はふかき谷、
あしもとより火もえける木の下をとほれる、
まことに避雨の陵をすぐる心地もかくと見えたり云々。
咲く花も見えて霜ふむ山路かな
卓池
2P741 称名院右府記
三月二日、高野にのぼりぬ。かぶろ坂不動坂など、
ききしよりもさかしく、此あたりは乗物もかなはざれば、
からうじてのぼりぬ。
不動坂にて山人の柴おろすを見て
山賤(やまかづ)がみねよりおろす柴車
とむるかたなき我心かな
放鵬子
2P742 四寸岩
鶺鴒(せきれい)の小尻とかめや四寸岩
貞佐
2P745 千首
山女郎花
さはりある花の名たてか女郎花
いかで高野の山に咲くらん
師兼
2P745 白河七百首
野亭女郎花
庵むすぶ高野(たかの)の秋のをみなへし
こころづからや露も置くらん
融覚
2P745 狂歌集
罪ふかき名にはたてれど女郎花
女人堂をも踏越えて咲く
唐衣橘洲
2P745 狂歌集
百合もその姫といふなにしほるるか
夢林
2P746 不動坂口女人堂  絵
呼子鳥なくやゆかれぬ杉の奥
女 此葉
2P745 不動坂口女人堂  絵
柿むいて居るもあはれや女人堂
塊亭
2P748 狂歌集
日南の珠の霰(あられ)や女人堂
桂子
2P748 狂歌集
妹よりなみだは兄ぞ女人堂
原松
2P750 花折 児滝(ちごのたき) 絵
不動坂 其の二 絵
花折にて
花躑躅あの世でさけと手折りけり
高階 藤島
2P752 不動坂 其の三 絵
外の不動 万丈転 不動橋
山笑ふ てつとも 見えで 岩不動
拾栗 庵
2P752 不動坂 其の三 絵
外の不動 万丈転 不動橋
父母の聲かあらぬか呼子鳥
鬼蔦
2P752 不動坂 其の三 絵
外の不動 万丈転 不動橋
ぬきはなす扇子もすずし不動坂
イセ 免士
2P754 不動坂 其の四 絵
四寸岩 卒塔婆木
雉子鳴くや 父の跡ふむ 四寸岩
高野鉄子
2P757 不動坂 其の五 絵
桜茶屋 神谷辻
桜茶屋にて
真盛の春をあざむく雪と雲 
いつも桜の花の下茶屋
浮輔
2P757 不動坂 其の五 絵
桜茶屋 神谷辻
すずしさや岩にしみこむ蝉のこゑ
其角
2P758 不動坂 其の六 絵
河根村 千石橋 塩竃古跡 日輪寺
唐人□官
塩竃の あとめずらしみ たひびとも
よそに見てやは とほる大臣
2P758 不動坂 其の六 絵
河根村 千石橋 塩竃古跡 日輪寺
八月十五日高野の御山にたどりつきぬ
雨風いみじくて女人堂迄はかたければ
河根のさとにやどりて
結縁もとげす真如の月も見ず
河根にうらみはかずかずの夜や
女 物香
2P760 不動坂 其の八 絵
学文路 西光寺 物狂石
霧雨や槙たつ山のいくえより
玉皋
3P3 大門 絵
あかつきをまつ寝仏や春の山
樗堂
3P5 文集
高野山うき世の外はなかりけり
八の谷すら八十のちまたを
3P10 時候
花までも心ありけり高野山
うき世の春をのぞきてぞ咲く
3P11 時候
ほととぎす初聲(はつこえ)よりも待たるなり
高野(たかの)の山の暁の空
3P11 時候
高野山(たかのやま)仏法僧の聲をこそ
待つべき空になく郭公(ほととぎす)
3P11 時候
降る雪の積もればいとど高野山(たかのやま)
うき世の道や隔てはつらん
飛鳥井栄雅卿
3P12 続千載
高野にまかりてよみ侍りける
あかつきを高野の山に待つほどや
苔の下にも有明の月
寂連法師
3P13 土室 絵
土室にて寒気を凌ぐところ
土室に蕎麦の匂いやけふの雪
風枝
貴僧とも知らで御咄し申上尻こそばいよ
高野六十 鯛ノ屋 貞柳
3P16 氷豆腐を製する図
あたたかなこほり味ふさむさかな
対山
3P18 新勅撰
世をのがれて高野山に住み侍りけるときによめる
高野山おくまで人の問ひこずば
しづかに峰の月は見てまし
参議成頼
3P18 続後撰
高野にこもりてよみ侍りける
今こそは高野の嶺の月を見て
深き御法(みのり)のほどもしるられ
源具親朝臣
3P18 玉葉
守覚法親王家五十首歌の中(うち)に
祝の心をよみ侍りける
君が代は高野の山の岩の室
あけん朝(あした)の法(のり)にあふまで
俊成
3P18 新続古
高野山(たかのやま)その暁をちぎり来て
ここにも同じ月や澄むらん
僧正栄縁
3P18 月清
二夜百首歌の中(うち)に佛寺(ぶつじ)
ながき夜(よ)に朝日まつ間の心こそ
高野(たかの)の奥に有明の月
後京極摂政
3P18 拾遺愚草
建久五年夏仁和寺宮五十首の中(うち)に祝
きみが代は高野(たかの)の山にすむ月の
まつらむ空に光そふまで
中納言定家
3P19 夫木抄 二十
あさ日まつ高野(たかの)の山にいかばかり
上なき道をさだめ入りけん
殷富門院大輔
3P19 千首
古寺月(こじのつき)
まぐりあはん其暁のしるべせよ
たかのの山のありあけの月
師兼
3P19 建仁元年八月十五夜歌合
古寺残月(こじのざんげつ)
これやこの残るひかりのかげならん
高野(たかの)の山の暁の月
右衛門督通親
3P19 家集
高野(かうや)にこもりける頃山居の月のこころを
世をいとふ深山がくれの住居(すまひ)には
月さへ雲のちりなかりけり
守覚法親王
3P19 草菴
のぼりては心の霧もはれぬべし
高野(たかの)の山の峰の嵐に
頓阿法師
3P20 雪玉
古寺朝(こじのあした)
朝日かげ出づるやいかに高野山(たかのやま)
まつ暁はすぎぬものから
逍遥院内府
3P20 家集
むすびおくいにし朽ちるめや高野山(たかのやま)
その暁をまつの下露
烏丸光廣
3P20 柏玉
さぞないかに其暁(そのあかつき)をちぎらねど
高野(たかの)の山にすめる夜の月
後柏原院御製
3P20 あとなしきしぐれをきくや高野山(たかのやま)
鬼貫
3P20 うぐひすに鳴きて見せけりみそさざい
許六
3P20 雲の峰鬱々として谷の坊
淡々
3P20 そのときのままか三鈷のまつの月
宋屋
3P20 ほろほろと鳴く山鳥や露の玉
蕪村
3P20 稲妻や座禅のこころ引きてみる
也有
3P23 山家集
寂然もみぢのさかりに高野(かうや)に詣で出でけるに
またの年のはなのをりに申しつかはしける
もみぢせし高野(たかの)の峰の花盛(はなざかり)
たのめし人のまたるるやなど
西行法師
同(山家集)
かへし
ともに見し峰の紅葉のかひなれや
花の折りにも思ひ出でけり
寂然法師
3P24 絵 後嵯峨上皇 養智院→櫻池院と改名
さくらさく木のまもれくる月かげに
こころもすめる庭の池水
後嵯峨上皇
3P26 続門葉
高野(かうや)の千日ごもりし侍りてのち、
一長者になりけるころ、
大塔のはなをおもひ出でて、
すみける高野の坊へよみてつかはしける
我山(わがやま)とおもはですぎしみとせだに
あだに高野(たかの)の花をやは見し
前大僧正覚濟
つくづくと見て居ればちる櫻かな
士朗
3P28 続門葉集
灌頂(かんじょう)とげて後に、
非冒地難得遇此教難也
(ひもうちなんとくぐうしけうなんや)
といへる大師の御ことばおもひあわせられて、
たふとく思ひければよみ侍りける
なに事か世にうれしきと人とはば
まことの法にあふとこたへむ
法印隆勝
かかるえにあはずばいかで濱千鳥
いまはたふるき跡を見ましや
法印道恵
3P29 壇上伽藍 絵
心圓法師
正三位知家
3P43 風雅
高野山(かうやさん)に登りて三鈷の松を見て
これやこのもろこし船にのりをえて
しるしを残す松の一もと
阿一上人
3P43 雪玉
廿四日草鞋をつけて諸堂順礼し侍れば、
大塔は柱ども立て心柱などきりて、
造作のあらましどもなり。
金堂はかたのごとくとりたてたるさまなるに、
三鈷の松むかしのはやけて、
その種生(みばえ)とて忌垣(いがき)しめぐらしたるを見て
今は其まつ暁やちかからん千とせふる木もおひかはりけり
内大臣實隆公
3P43 謾吟集
いにしへの法のさかえをしたへとて
今もうゑつぐひともとのまつ
契冲
3P44 新千
題しらず
鐘の音はあけぬと聞けど高野山(たかのやま)
なほはるかなる暁の雲
中務卿宗尊親王
3P45 柏玉
古寺鐘(ふるでらのかね)
高野山(たかのやま)其(その)あかつきの鐘の音に
うき世の夢や先(まづ)さめてまし
3P45 草根
古寺暁鐘(ふるでらのあかつきのかね)
高野山(たかのやま)月こそはあれ岩の室
いでやむとほき暁(あかつき)のかね
正徹
たか野山なき身のかずにけふもまた
もれてききぬる入相の鐘
大納言光廣
3P50 千首
かねの音も今はと告げよ高野山(たかのやま)
あかつきをまつの扉に
師兼
3P50 狂歌
湯にもなる物とてきけば煩悩の
よごれを洗ふ暁の鐘
唐衣橘洲
3P54 山家集
三昧堂の方へ分け参りて、秋の草ふりかはり、
鈴虫の音幽かにきこえてあはれなりければ
おもひ置きしあさちの露(つゆ)を分けいれば
纔(わづか)なるすずむしの聲
西行上人
3P55 蓮池
来て見れば露(つゆ)にうつりて眼の玉の
佛ものりの池の蓮葉(はちすば)
拾栗山人
蓮の花おもしろがるは慮外なり
支考
3P62 絵 丹生明神出現のところ
あかつきはまだはるかなり高野山(たかのやま)
なほもかかげよ法(のり)のともしび
丹生津姫
高野山(たかのやま)暁をまつ身なれども
ふくるはをしき法(のり)のともしび
神(しん)歓喜して去(さり)給ひしぞ
宥快師
3P65 谷上
天正十三仲秋の頃、金堂の御柱たてなど拝み奉るに、
所から人のたたずまひを見るに、
天上に生れ侍る心地して、
思の外久しく谷上に宿りける寝覚に
かたしきの枕の下の谷水のおとに心もすめる夜の月
紹巴
3P68 絵 正智院 快雅
こけの下さこそと後(のち)の身をしれは
板間のあめのもるはものかは
快雅法印
3P73 山家集
さくらちるやどにかをれる菖蒲(あやめ)をば
はなあやめとやいふべかるらむ
同(山家集)
散るはなを今日のあやめのねもかけて
藥玉ともやいふべかるらむ
3P76 絵 興山寺
興山上人出塵のをり
よしや世にいはねの小松としふとも
まちみむもただこがらしの風
3P78 巡寺八幡神幸の図
3P86 峻徳院
高野山(たかのやま)苔の下までむすびけり
ときはが森の露のちぎりを
放鵬子
3P87 絵 光臺院
3P98 花折院
誰がために折るとかはしるさくら花
三世(みよ)の佛もゆるせ一枝
明釋上人
折花(をるはな)にそへし言葉のいろ香こそ
世をふる寺の名に残りけれ
中納言爲綱卿
3P104 絵 金剛三昧院 硯
3P106 春川試草 上藏院
飛ぶものは秋の螢や奥の院
伊予 圓南
3P107 金剛三昧院
ふたつなきものと聞くこそうれしけれ
佛はさとり我は迷ふに
大納言爲兼
3P107 直義朝臣奉納短冊写
なにはづのみぎはの波ものどかにて
いまははるべとかすみたつなり
尊氏
3P107 むろのうちに光はみちてともし火の
おのが影こそ又あらたなれ
直義
3P107 さだめなきうき世の中としりながら
なほあらましを思ふはかなさ
3P107 から衣うらにかけける玉をなど
しらで年月まよひ來ぬらん
重茂
3P107 ふたつなきほとけの道としりながら
わくるこころにまよひそめてき
為明
3P107 つきにわが心のみちをさかすれば
へだつと見つる雲もまよはず
顕氏
3P107 せをはやみゆく水よりもほどなきは
むなしくおくる月日なりけり
有範
3P107 むまれあふみのりの道のうれしさよ
人の身をだにうけがたき世に
廣秀
3P108 しら雪のつもるわが身のつみをだに
思ふもしらでふるぞはかなき
師直
3P108 むつのみちめぐるもしらで見る夢の
さめぬややみのうつつなるらん
行珍(土へん)
3P108 さてもさは佛のかたみのこし置きて
いまの世までも法(のり)はたえせず
頼春
3P108 りやう山(ぜん)にときおく法(のり)のあるのみか
しやりの佛のすがたなりけり
尊氏
3P108 ながき夜の月はしばしもくもらぬを
ねぶりしうちの闇にぞありける
直義
3P108 むらさめのおとはの山のほととぎす
なく一聲はまがはざりけり
尊氏
3P108 さつきまで後はとおもひしほととぎす
今だに聲のあかずも有るかな
為秀
3P108 かりそめに雲がくれせし月かげの
あとをぞてらす法(のり)のともし火
行春




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