紫式部歌碑(谷崎潤一郎書)

紫式部歌碑(谷崎潤一郎書)は、福井県越前市の紫式部公園にある。
高さ2m、幅2.5mの石碑には、次のように刻されている。
こゝにかく
 日野の
   杉むら
 埋む雪
小塩の松に
 けふや
  まがへる
 紫式部詠
  谷崎潤一郎書

紫式部集では、次のとおり越前国府で詠んだ和歌が載せられている。
  暦に、初雪降と書つけたる日、目に近き
  日野岳といふ山の雪、いと深く見やらるれば
こゝにかく 日野の杉むら 埋む雪 小塩の松に 今日や まがへる

(意味)
ここ越前では、日野岳の杉の群れをこうして雪が埋めているが、
暦に「初雪降る」とある今日は、都で見た小塩山の松に見まちがえることであるなあ。

日野岳は、越前国府から眺められた日野山(標高794.8m)で越前富士といわれている。
その美しい山の杉林に雪が積もっているのを見ると、京都の小塩山(おしおやま)に降り乱れる雪を思い出し、郷愁に浸っている紫式部の姿が偲ばれる歌である。
「小塩」は、京都市西京区大原野の小塩山(標高640m)。山麓に藤原氏の氏神を祀る大原野神社があり、雪、月、花、松などで名高い歌枕。
「まがふ(粉ふ)」は、入り乱れて、はっきりしなくなる、見分けがつかなくなる、乱れ散る、等の意。
「まがへる」については、「似ていて区別がつかない」と解するか「入り乱れる」と解するかで、研究者によって見解が異なっている。
(久保田孝夫氏ほか「紫式部集大成」参照)
この石碑は、昭和33年に河濯山芳春寺(越前市高瀬二丁目)に紫式部顕彰会の手で建立されたものが、紫式部公園完成時に移設されたものである。
裏面には、国文学者、山田孝雄博士の精細な文章が彫られている。
→ 紫式部ゆかりの地



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