落合不動、落合摩崖仏は、和歌山県橋本市真土にある。
国道24号線から落合川を約2㎞遡ったところにあり、道の左側の高台に祠があり不動明王を祀っている。
「紀伊国名所図会」の落合不動の項目に次のように記されている。
「街道の北にあり。堺川の上流真土、平野の間、紀和の両山相迫りて、中間わずかに一帯の流れを通ず。
川中に不動岩とて、不動を彫り付けたる大石あり。近年祈願するもの多く、西岸に不動の小堂を建て、臨泉庵といふ。
此処より望むに東西北の三面、連岨屹立(れんそきつりゅう)して清泉環流し、烏帽子岩、のぞき岩等の奇石其間に踞欹して、奇勝の地なり。」
落合摩崖仏は、川の中の10個の巨石の表裏面に、不動明王像一、観音菩薩像一、天女二、詩文が七面に刻まれている。
不動明王像は江戸期の作で、上記名所図会に記されたものである。
不動明王は、密教で創案されたほとけで、大日如来の教令輪人、つまり如来の教えに背く衆生の悪をくじいて教化するため
大日如来が恐ろしい姿を仮に現したとされ、激しく噴き上げる火焔で汚れを焼き浄め、同時に密教の修行者を擁護する。
向かって右に矜羯羅(こんがら)童子、左に制吨迦(せいたか)童子を従えている。
不動明王の巨石の裏面には、弥勒菩薩像、北隣の巨石の表裏面に「天女像」が彫られている。
道の左上の岸壁にも等身大の不動明王像が彫られている。「昭和一一年教弌四六才」と書かれており、道者佐々木教弌が彫ったものである。
彫られている詩文は次のとおり。
(橋本市真土側)
たのませて たのまれたまふ みほとけを たのまぬ人ぞ たのみかひなき
巡り来て こゝに落合不動 二世のちかいを 守りたまはん
(五條市木ノ原町側)
三界無安 猶如火宅 衆苦充満 其可怖畏
諸行無常 是生滅法 生滅々巳 寂滅為楽
光明遍照 十万世界 念仏衆生 摂取不捨
あふきミて な可むる 阿字乃ふる里を こいこがれつゝ 世越わたる可那(かな)