西行の和歌(高野山関係)

 歌集(出典)
   詞書
     和歌
山家集0138 
   高野にこもりたるころ、草のいほりに花の散り積みければ
     散る花のいほりの上を吹くならば風入るまじくめぐりかこはむ
山家集0202 
   高野の中院と申所に、あやめ噴きたる房の侍りけるに
 櫻の散りけるがめづらしくおぼえて、よみける
    桜ちる宿を飾れる菖蒲(あやめ)をば花菖蒲とやいふべかるらん 
山家集0203 
  坊なる稚児、これを聞きて 
     散る花をけふのあやめの根に掛けて
 薬玉ともいふやべかるらん
 山家集0477
   寂然、高野にまゐりて、深秋紅葉と云ふ事をよみけるに
     さまざまの錦ありける深山かな花みし嶺を時雨そめつつ
山家集0531 
   秋ごろ高野へまゐるべき由たのめてまゐらざりける人のもとへ、
雪降りてのち申しつかはしける
     雪深くうづみてけりな君来やと紅葉の錦敷きし山路を
山家集0575 
  年の暮に、高野より都なる人のもとにつかはしける 
     おしなべておなじ月日の過ぎゆけば
都もかくや年は暮れぬる
山家集0807 
  とかくのわざ果てて、後の事ども拾ひて、
高野へまゐりて帰りたるに 寂然 
     入るさには 拾ふ形も残りけり 帰る山路の友は涙か
山家集0913 
   高野より京(みやこ)なる人につかはしける
     住むことは所柄ぞといひながら 高野はもののあはれなるかな 
山家集0916 
  ことのほかに荒れ寒かりける頃、宮の法印高野にこもらせ給て、
この程の寒さはいかがとて、小袖給はせたりける又のあした申しける  
     今宵こそ憐み厚き心地して あらしの音を余所に聞きつれ
山家集0919 
  阿闍梨源賢(げんけん)、世をのがれて高野に住み侍りける、
あからさまに仁和寺へ出でて、かへりもまゐらぬことにて、
僧都になりぬと聞きて、いひつかはしける 
     袈裟の色や若紫に染めてける 苔の袂を思ひかえして
山家集1045 
  秋の末に、寂然高野にまゐりて、暮の秋に寄せて思ひを述べけるに 
     馴れ来にし都もうとくなり果てて かなしさ添ふる秋の暮かな
山家集1049 
  深夜水声といふことを 高野にて人々よみけるに 
     まぎれつる窓のあらしの声とめて 更(ふ)くるを告ぐる水の音かな
山家集1056 
  返し(1055の寂然が大原から送った歌に) 
    したはれしなごりをこそはながめつれ
たちかへりにし峯の秋霧 
山家集1057 
  常よりも道辿らるる程に雪深かりける頃
高野へまゐると聞きて、中宮大夫のもとより、
かかる雪にはいかに思ひ立つぞ、
都へはいつ出づべきぞ、と申したりける返事に 
     雪分けて深き山路に籠りなば 年かへりてや君に逢ふべき
山家集1071 
  みやたてと申しける端者(はしたもの)の、年高くなりて、
さまかへなどして、ゆかりにつきて、吉野に住みはべりけり。
思ひかけぬやうなれども、供養を述べん料にとて、
果物を遣はしたりけるに、花と申すものの侍りけるを
見て遣はしける 
     思ひつつ花のくだものつみてけり 吉野の人のみやたてにして
山家集1074 
  寂然、紅葉の盛りに高野にまゐり出でにけり。
またの年の花の折に申し遣はしける 
     もみぢ見し高野の峯の花ざかり たのめぬ人の待たるるやなに
山家集1079 
  高野より出でたるけるに、覚堅阿闍梨聞かぬさまなりければ、
菊を遣はすとて 
     汲みてなど心通はば問はざらん 出でたるものを菊の下水
山家集1084 
  宮の法印、高野に籠らせ給ひて、おぼろけにては出でじと思ふに、
修行のせまほしき由語らせ給ひけり。千日果てて、
御嶽にまゐらせ給ひて、言ひ遣はしける 
     あくがれし心を道のしるべにて 雲にともなふ身とぞなりぬる
山家集1121 
  思はずなること思ひ立つ由聞えける人のもとへ、
高野より言ひ遣はしける 
     枝折(しをり)せじ なほ山深く分け入らん
 憂きこと聞かぬ所ありやと
山家集1150 
  高野に籠りたりける人を、京より、何事か
またいつか出づべきと申したる由聞きて、その人に代りて 
     山水のいつ出づべしと思はねば 心細くてすむと知らずや
山家集1157 
   高野の奥の院の橋の上にて、月明かかりければ、諸共に眺め明かして、
その頃西住上人京へ出でにけり。
その夜の月忘れ難くて、又同じ月の頃、西住上人に言ひ遣はしける 
     事となく君恋ひ渡る橋の上に 争ふ物は月の影のみ 
山家集1198-1207 高野の西行から大原の寂然への贈答歌 
  入道寂然、大原に住み侍りけるに、高野より遣はしける 
     山深みさこそあらめと聞えつつ 音あはれなる谷の川水
     山深み真木の葉分くる月影は はげしきもののすごきなりけり
     山深み窓のつれづれ訪ふものは 色づきそむる櫨(はじ)の立枝
     山深み苔の筵の上にゐて 何心なく鳴く猿(ましら)かな
     山深み岩にしだるる水溜めん がつがつ落つる橡(とち)拾ふほど
     山深みけ近き鳥の音はせで 物おそろしき梟の声
     山深み木暗き峰の梢より ものものしくも渡る嵐か
     山深み榾(ほだ)伐るなりと聞こえつつ 所にぎはふ斧の音かな
     山深み入りて見と見るものはみな あはれ催すけしきなる哉
     山深み馴るるかせぎのけ近さに 世に遠ざかるほどぞ知らるる
山家集1239 続拾遺和歌集1149 
  左京太夫俊成、歌集めらるると聞きて、歌つかはすとて 
     花ならぬ言の葉なれどおのづから 色もやあると君ひろはなん
山家集1371 
  やがてそれが上は、大師の御師に逢ひまゐらせさせおりましたる峰なり、
「わがはいしさ」と、その山をば申すなり。
その辺の人は「わがはいし」とぞ申しならひたる、
山文字をば捨てて申さず、また筆の山とも名付けたり。 
遠くて見れば、筆に似て、まろまろと山の峯の先のとがりたるやうなるを、
申し慣はしたるなめり、行道所より構へてかきつき登りて、
峰にまゐりたれば、師にあはせおはしましたる所のしるしに、
塔を建ておはしましたりけり。塔の礎はかりなく大きなり。
高野の大塔などばかりなりける塔の跡と見ゆ。
苔は深く埋みたれども、石大きにして、あらはに見ゆ。
筆の山と申す名につきて
     筆の山にかき登りても見つるかな 苔の下なる岩の気色を
残集0031 
  忠盛の八条の泉にて、高野の人々仏描きたてまつることの
侍りけるにまかりて、月明かりけるに、池に蛙の鳴きけるを聞きて 
     さ夜ふけて月にかはずの声聞けば 汀もすずし池の浮草
西行上人集0391 
  美福門院之御骨、高野の菩提心院へ渡させ給ひけるを見たてまつりて 
     今日や君おほふ五の雲晴れて 心の月をみがき出らん
西行全歌集 撰集ほか0055 
  高野山(たかのやま) 
     高野山暁を待つ峰にても 更くるは惜しき秋の夜の月

(和歌山県立博物館編「特別展 西行」図録 後藤重郎校注山家集 参照)



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