蔵王権現社

蔵王権現社(八王子社)は、和歌山県橋本市御幸辻にある神社である。

紀見村郷土誌に、口碑伝説として、蔵王権現縁起が次のように書かれている。

辻村(御幸辻)に祀る八王子社は、八人の王子を祀るものである。
嵯峨天皇(786年-842年)は、厚く仏法に帰依し、在世中に2度高野山に行幸された。
当時朝廷には、嵯峨天皇に従わない臣もいたため、天皇が崩御した際に、忠臣が御遺体を高野山に移すことにした。
紀見峠を経てこの地に差し掛かった時、賊が背後に迫っていると聞き、御遺体を裏山(一説に谷間)に隠した。
その時に、王子の一人が権現して老人の姿となり、賊を欺いて難を救った。
すなわち、「権現して王を蔵す」として、この時から八王子社が蔵王権現と呼ばれることになった。
谷間とは、現在の御幸辻駅の地点で、当時は谷深く熊笹が密集していたが、山崩れのため谷が浅くなったという。

鳥居前の附水盤と灯籠には、文永7年(1270年)の銘がある。
南海高野線御幸辻駅下車、徒歩2分。




令和7年 改訂分

正遷宮後の当地の案内板には、次のように記されている。

蔵王権現社・八王子権現社 御由緒
蔵王権現社の創建は定かでない。八王子権現社は文永七年(鎌倉時代)創建。
平安・鎌倉時代は、疾病や災いが繰り返し蔓延した不安な時代であった。
当時、疾病や災いは疫病神や鬼がもたらすものと考えられ、各村では疾病収束や病気平癒を祈願する疫病信仰が広がる。
この地には、天皇や上皇が高野山に参詣した道(御幸道)があり往来がさかんであったことから、此処に二社が建立され、辻村の氏神として篤く崇敬された。
現在の地名が御幸辻となったのは、この古事に因んだものである。

○蔵王権現社
 蔵王権現は、日本独自の山岳信仰である修験道の守尊である。
 奈良県吉野町にある金峯山寺本堂(蔵王堂)の御本尊として知られる。
 修験道の開祖とされる役行者が金峯山で修行中に示現したという伝承がある。
 釈迦如来、千手観音、弥勒菩薩の三尊が合体したものとされ、疫病や災いを封じる力を持つと信じられた。
 疫病退散、病気平癒を願い、修験者による祈祷や祭祀などが行われた。

○八王子権現社
 八王子権現は、須佐之男尊の御子神である八柱(五男三女)を祀る。
 八柱とは八島士奴美神(やしまじぬみのかみ)、五十猛命(いたけるのみこと)、大屋都比売神(おおやつひめのかみ)、津麻津比売神(つまつひめのかみ)、
 大歳神(おおとしのかみ)、宇迦之御魂神(うかのみたまのかみ)、大屋毘古神(おおやびこのかみ)、須勢理毘売命(すせりびめのみこと)である。
 病気や災いから免れるご利益をもたらすと信じられた。

奉斎年表
 一二七〇(文永七年)八王子権現社創建(水盤、灯籠に銘あり)
 一八三八(天保九年)花立て奉納
 一九一三(大正二年)鉄道建設に伴いやむをえず牛頭天王神社に合祀
 一九三〇(昭和五年)現在地にお社建立、奉斎
 一九八三(昭和五八年)八王子権現社正遷宮
 二〇二三(令和五年)正遷宮

令和五年五月吉日
 御幸辻氏子中




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