不動堂(国宝)は、和歌山県の高野山に現存する建物では、最古のものである。
言い伝えによれば、建久8年(1197年)鳥羽天皇の皇女八条院暲子内親王の発願により、行勝上人が創建したという。
創建時には、一心院谷、金輪塔の傍らに位置していたが、明治41年(1908年)に現在地に解体移築された。
鎌倉時代の和様建築であって、それ以前の住宅建築の様式を仏堂建築に応用したものである。
桁行3間、梁間4間の主屋を中心にして、左右に桁行1間、梁間4間と桁行1間、梁間3間の脇の間が付属した檜皮葺の建物である。
屋根の勾配が美しく、堂の四隅は四人の大工がめいめい思い思いに作り上げて一緒にしたとも伝えられる。
本尊は、木造不動明王坐像で、運慶作と伝えられる木像八大童子像(6躯国宝)が安置された。
木造不動明王坐像は、像高87cmで、行勝上人の自作と伝えられている。
八大童子は、不動明王に仕える八人の弟子で、恵光、恵喜、鳥倶婆誐(うぐばが)、清浄比丘、矜羯羅(こんがら)、制多迦(せいたか)、阿耨達(あのくた)、指徳の各童子の像が、現在霊宝館に収蔵されている。
五来重氏は、「増補高野聖」で次のように記している。
いま高野山最古の建物である寂静院不動堂は、もと明寂の骨堂であった阿弥陀堂で、高野聖にとっても貴重な遺構なのである。
南海高野線高野山駅から南海りんかんバスで「金堂前」下車、徒歩5分。中門前の無料駐車場を利用できる。
平成29年11月21日から23日まで、不動堂内部が特別に公開された。堂内には、大変穏やかな表情の不動明王立像(平櫛田中作)が本尊として安置されている。