那智の滝は、和歌山県那智勝浦町にある国指定の名勝である。
那智山には、烏帽子山、大雲取山、船見峠、妙法山を源流とする4本の渓流があり、60もの滝がある。
このうち修験に適した滝は、一ノ滝、二ノ滝、三ノ滝、曽以の滝(文覚の滝)など計48本で、「那智四八滝」と呼ばれている。
那智の滝とはその総称だが、一般には那智の滝といえば、一の滝を指し、那智大瀧と呼ばれている。
那智大瀧は、高さ133m、幅13m、滝壺の深さ10mで、日本一の高さである。
大瀧正面の広場の脇に、この滝を神体とする飛瀧神社があり、大己貴命(おおなむちのみこと)を祭神としている。
役行者(小角)は、この滝を山岳修行の道場中第一の霊場に定め、千手観音を本地仏としたことから飛瀧権現とも呼ばれている。
ここでは、山覚を初め多くの修行者が滝籠り修行をしている。
那智の大滝の延命長寿の御利益は、花山法皇が熊野行幸の際二ノ滝で一千日の滝籠りを行い、「九穴の貝(きゅうけつのかい)」を滝壺に沈めたことに由来する。
二ノ滝に対面する断崖上には、花山法皇御籠所跡があり、県の史跡に指定されている。
現在、飛瀧神社は熊野那智大社の別宮で、滝近くには、お滝祈願所と御滝拝所がある。
7月と12月には、御滝注連縄張替行事があり、7月14日には、那智の扇祭りが行われる。
「文覚の滝」については、鎌倉時代初期、同僚の妻 袈裟(けさ)に恋慕し、誤って切ってしまい出家した文覚(遠藤盛遠)が荒行をして、凍死寸前で不動明王から遣わされた童子に救われたとの逸話が平家物語にある。
明治16年(1883)には、東京市村座で歌舞伎「橋供養梵字文覚(はしくようぼんじのもんがく)」が上演された。
上演では、9世市川団十郎が、不動明王と文覚上人を演じている。
平成23年(2011)台風による土砂災害で文覚の滝が消滅したが、熊野那智大社の宗教上の必要性から、滝が復元された。→ 文覚井 通り堂(文覚堂)
JR紀勢本線那智勝浦駅からバスで「那智の滝前」下車、徒歩3分。