南天苑本館は、大阪府河内長野市天見にある温泉旅館である。
高野街道は、京都、大阪から高野山への参拝客が古来多く行き来していた。
延元年間(1336-1340)に、近郷の流谷八幡宮の境内にあった極楽寺に湯治場が開かれ、病人や多くの参詣客が入浴し、「極楽風呂」「極楽温泉」と呼ばれていたが、寛延3年(1750年)に神社、温泉共に焼失し、廃湯となった。
その後、大正4年(1915年)に天美駅が開業し、南海電鉄が旅客誘致のため天見温泉の開発が始まった。
天見温泉・南天苑本館は、元々、大正2年(1913年)に阪堺軌道(後に南海鉄道と合併)が、堺市の大浜公園に建設した娯楽施設、「潮湯」の建物の一つ「家族湯」の建物である。
この建物が、昭和9年(1934年)に室戸台風で損壊し、昭和10年に現在の場所に移築されて、大阪市阿部野の料亭「松虫花壇」の別館として営業を始めた。
平成14年9月に「明治建築研究会」により建物調査が行われ、建築界の大御所、辰野金吾博士の辰野片岡建築事務所の設計であることが分かった。
そのため、平成15年(2003年)に国の登録文化財に指定されている。
建物は、和風をベースとしながら諸所に洋風モダンな意匠が取り入れられた、大正昭和初期の建築様式を偲ばせる貴重な建物である。
堺市の大浜公園には、「いにしえの大浜公園」として、当時の潮湯の写真などが紹介されている。
南海高野線天見駅下車、徒歩2分。