阿波野青畝句碑は、滋賀県大津市本堅田の浮御堂にある。
浮御堂(満月寺)の山門を入った北側に石碑があり、大正12年の阿波野青畝 句集「万両」に収められた次の句が刻されている。
五月雨の雨垂ばかり浮御堂 青畝
川島由紀子氏は、「阿波野青畝への旅」のプロローグで、この句を次のように紹介している。
大津市本堅田の浮御堂の山門を入るとすぐにこの句碑がある。
子育て中近くに住んでいた私は、小児科通いのたびによく前を通った。
自転車を漕ぎながら、「さみだれのあまだればかり---」と声に出してみれば、濁音とア音が響き、心地よいリズム。
五月雨と言えば、梅雨の鬱陶しい雨のことだが、この句では明るい雨のように感じられるのは、ア音が響くせいだろう。
近江八景の中の「堅田の落雁」に描かれている雅な浮御堂に、俗な雨だれを取り合わせ、明るい雨の中ちょっとユーモラスでもある。
句碑では漢字表記になっているが、平仮名表記にすれば一文字一文字が雨粒のようにも感じられる。
雨の日に行ってみると、寄棟の屋根の浮御堂は樋がないので、屋根から四方の湖面に直接雨だれがぽたぽた落ちていた。
さみだれのあまだればかり浮御堂 (大正13年 二十五歳)
この句の掲載されている『日本新名勝俳句』(昭和六年刊行)を広げてみる。
徳富蘇峰の序文によれば、大阪毎日新聞と東京日日新聞が共催で、先年選定した日本新名勝百三十三景のどれかを詠んだ句を募集し、高浜虚子に選句を依頼。
その結果、応募句数は十万三千二百七に上り、秀逸の一万句を収録したという。その内の最優秀賞二十句に、琵琶湖を詠んだこの句が入賞した。(以下略)
→ 知音 故人の名句に学ぶ
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