芳春院

芳春院は、京都市北区大徳寺の塔頭である。
慶長13年(1608)加賀の前田利家の夫人 まつ(松子)(芳春院)が玉室宗珀(ぎょくしつそうはく)を開山として建立したもので、前田家の菩提寺である。
寛政8年(1796)の火災により創建時の建物は失われたが、前田家11代 治脩(はるなが)によって2年後に再興された。
現在の本堂は明治初年に建てられたものである。

本堂には、本尊 釈迦如来像や玉室宗珀の木造が安置され、芳春院の木像や前田家歴代の位牌が祀られている。
木像を安置している須弥壇の引き戸には、芳春院が好んだという桔梗の花が描かれている。
本堂襖絵は、動物画の名手とされる日本画家 竹内浩一氏が10年の歳月をかけて2016年に完成した水墨画である。
下間(げかん)之間は、琵琶湖の鯰を描いたという「瓢(ひょう)」、室中(しつちゅう)之間は雨の中の鳥を表した「片しぐれ」や、木から木へ飛び移る猿を描いた「啼く」、
上間(じょうかん)之間は「杜(もり)」と題した狐や蛇の姿が、淡い墨で表現されている。

作庭家 中根金作が復元した本堂南庭は、「花岸庭(かがんてい)」と名付けられた白砂が広がる枯山水庭園で、山深い渓谷から流れ出る水がやがて湖に注ぎ、大海に帰るという山水の様を表している。
本堂南庭を眺める縁側と東寺の五重塔の天頂が同じ標高となっているため、縁側に座って庭を眺めると、塀は低いが市街地のビルなどは全く視界に入らず、ゆったりとした時間を過ごせる。

本堂北側には、飽雲地(ほううんち)を前にした優美な二重の楼閣 呑湖閣(どんこかく)がある。
閣上から比叡山を東に望み、その向こうに広がる琵琶湖の水を呑み干すという意を込めて名付けられた。
前田利家の子 利長の依頼により、玉室和尚に参禅していた医者 横井等怡(とうい)と、茶人や作庭家としても知られた小堀遠州によって元和3年(1617)に建てられたもので、
金閣(金閣寺)、銀閣(銀閣寺)、飛雲閣(西本願寺)と並んで「京の四閣」とも称される。
現在の建物は文化元年(1804)に再建されたもので、上層部に前田家の先祖とされる菅原道真を祀るほか、
下層部には玉室和尚の師 春屋宗園の木像や檀越(だんおつ)である近衛家の位牌などを安置しており、京都府の指定文化財となっている。



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