南院は、和歌山県高野山五の室院谷にある寺院である。
東大寺法相の学僧 子島真興僧都が建立したもので、東大寺南院に住んでいたので、寺名とした。
近畿三六不動尊霊場の結願寺として知られている。
本尊の大聖波切不動明王(国の重要文化財)は秘仏で、毎年6月28日のみ開帳される。
波切不動明王は、弘法大師が一代の御守本尊として、尊師恵果阿闍梨から授かった赤栴檀(しゃくせんだん)の霊木で自作したものである。
806年に明から帰国する際、玄海の荒波の中で、弘法大師の祈念に答えて博多に安着したといわれ、「波切不動明王」の名号はこの謂れでつけられた。
その後、京都の神護寺に安置され、醍醐寺に移された。
平安時代中期の平将門の乱では、名古屋の熱田神宮に祀られて降伏護摩が修され、後三条天皇の意志により、剣が熱田神宮に残された。
そして後三条天皇が自作した剣を明王に持たせて高野山に戻されたという。
承保2年(1075年)維範検校の時南院の本尊とされた。
弘安4年の元寇の役では、勅命により賢隆阿闍梨以下六十の山僧が、明王を率いて博多志賀の島に籠り、元軍覆滅を祈念したといわれる。
本堂外陣の天井には、不動明王の化身といわれる白龍が描かれている。天井絵の下で柏手を打つと、音が見事に響き、龍の鳴き声と言われている。
境内の北隅には、大野林火句碑がある。
南海高野線高野山駅からバスで波切不動前下車、徒歩すぐ。